「母の、好みだからね」
「じゃあ、キヨシの好みは?」
つい、唇が笑いに歪む。
「これが、男の好みだけは、母と全く同じなんだよね」
これは、本当。
乱暴に、シャワーカーテンが掻き退けられて、周防が中から半裸で出てくる。
「ぎゃっ」
あたしは、周防より先に外に出る。
「『きゃっ』っじゃ、なくて『ぎゃっ』だもんな」
「だって、周防さんマッチョ系じゃない。あたし、苦手なんだよ~」
「じゃあ、ヒトの風呂を邪魔するんじゃない」
そうなんだよ。
すらりっとした、女の子と見間違えるような、きれいな男の子なんかが好みなのに。
周防はほぼ対極なのに。
着替えてるハズの周防の視界に入らないように、浴室のドアの前に、突っ立って
「もうひとつ条件があるんだよね『相手が資産家』っていう。自分の娘でそういうのが釣れると思ってるところが痛いんだよ、あのヒト」
「そうだな。資産家の爺さんなら釣れるだろうけど」
ちらりと部屋をのぞく。
ベッドに腰掛けている。
スーツのズボンをはいていて、シャツのボタンをかけている。
もういい、かな。

