実は、気が小さいあたし。

見知らぬオヤジが飛び出してきて、怒られたりしようもななら、ここで精神砕け散る・・・的なあたし。

そういうあたしの、本当の気質なんか、知っているハズはないのに。

反射神経がいいのか、運動神経がいいのか、

ヤツのその能力は、あたしのその不安を、いつもスグに取り除いてくれる。

カチャ

何の気配よりも早く、ドアのロックが解除される。

何となく、この間で、中身がヤツであることが確信される。

ホッとして、次の瞬間にはあたしは期待感に支配される。

今日も、プロにメイクしてもらっていて、自分の趣味とは違う、エレガントな服装をしている。

今日の格好こそ、ヤツの好みにちょっとは引っかかるかもしれない。

ドアが開いて、ヤツはその姿を現わす。

「ああ、時間なんだ」

いつもと同じ、反応、態度。

そうか、やっぱり、ダメなんだ。

あたしの期待は失望になる。

まあ、分かっていたことではあるけれど。

なのに、いつも沸き起こる期待感が、我ながら空しい。

いつもどおり、あたしに対しては全く飾る気のないその姿。

…一瞬前まで寝てたんだな。

それは、スグにわかる。

あんまり女受けしない・・・

とかいいつつ、端正なツクリの顔。

今日は、全く整える気すらない、髪。

・・・・・・でも、この、気合を入れてない髪形のほうが、本人の、気合入れてるときの1千万倍よりもっといい。

何て思っているってことは、一生本人に教えてやる気はない。

モテちゃったら困るから。

「寝てた?」

「ごめん。時間だったね」

寝ていたことを証明するような、ちょっとハスキーがかった声が、言う。

ドアが少し大きく開く。

くしゃくしゃになったかわいい髪と、ボーッとしてる、男らしく、整った顔がよく見える。

「お休みなのに、ごめんね」

思わず、素直に声をかけてしまう。

こっちは、とっても素直な気持ちで言ってるっているのに、彼は皮肉に感じて目を覚ます。

「ごめんねって・・・気持ち悪いな。ヒトをこき使っておいて」