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「あ、これ、いいな」

周防が手を伸ばしたのは、恐れ多い高級品。

靴なんかに、こんなにお金かけられません。

っていうか、そもそも買えません。

あたしは、びびって、周防の服の袖を引っ張った。

「え?嫌い?」

「そうじゃなくて、あたし、そんなお金持ってない」

「・・・いいよ、オレが」

「とんっでもない。こんなの買ってもらっちゃったら、向こう半年くらいは周防さんの召使いしなくちゃいけないじゃない!!」

周防は驚いて、靴を手に取るのをやめた。

「そんな、オーバーな」

「っていうか、そもそも売り場間違えてるよ。いや、入るデパートから間違えてるかな。隣行こう、隣」


あたしは、居るだけでなんとなく落ち着かない、高級感漂いすぎるスペースから、周防を引き剥がす。

「周防さんがこういうとこでお買い物するってことはわかったけど。・・・・って、周防さんもお金もちなんだ」

「・・・さあ」

周防の声が、すぐ近くから響いてきて、自分で驚く。

周防を連れ出すために、がっちりと腕を組んで引っ張っていたらしい。

迷惑なのか、どうでもいいのか、よくわからない表情のまま、あたしに引っ張られている、周防が間近にいる。