「待ってよ、周防さん」
廊下の先で、周防が振り返る。
「どうした?忘れ物?」
「そうじゃなくて」
立ち止まって、呼吸を整える。
「もう、終わった」
「え?」
「お見合い終了。断られた」
周防は声も出ない様子。
「本当に?」
怪訝な表情。
「うん。でも黙ってて母には。相手のヒト、時間稼ぎしたいみたいで、『おつきあい』してることにしてくれって」
「なんだそりゃ」
あれ?でもそうすると、あたしは周防に会えないわけか。
「・・・勝手だな。って言いたいところだけど、オレにとっても、時間稼ぎが出来るのか」
「そうなっちゃうね」
「そうだ、いいこと思いついた。」
「何?」
「この時間稼ぎが終わったら、次は『もうこりごりだ』ってお見合い断ればいいんだよ」
「なるほどね。そしたら、周防さんはあたしの相手を、貴重な休みにしなくてすむようになるもんね」
両手を挙げて喜ぶかも。
思ったのに、周防は一瞬黙った。
「・・・そういえば、そうだな」

