「帰っていいよ」
目を戻すと、山野が笑ってた。
「お母さんが、もっと若い子が好きなのはうすうす知ってるよ。けど、あなた若いんだし。言いなりになる必要はないと思うよ」
山野は立ち上がった。それからあたしの手を引っ張って立たせる。
「『お付き合いしてみることにしました』はお母さんにだけ言えばいいから。じゃあ、ばいばい」
先に、背を向けて、山野は歩き出す。
そうすれば、あたしに罪悪感を抱かせない。
・・・いいヒトだなあ。
かわいいし、かっこいいし。
お見合い相手だし。
なのに、何であたし、走ってるかな。
今日の「運転手」の方に。

