今日は運転手で


何か、手まで震えてきたぞ・・・

ネクタイを首に回す。

色々と、不自然なあたしに、気づかれて、怪しまれるんじゃないか。

ハラハラして、ちらりと視線を落として周防を見る。

・・・大丈夫。

顔をあたしの邪魔にならないようにそむけてる。

腹が立つくらい、あたしに無関心な態度。

まあ、おかげで、丁寧に、ネクタイを、襟の下に沈み込ませることができた。

「普通の結び方しか知らないけど」

「大丈夫。オレも知らないから」

しまった。

話しかけたから、周防はこっちを見た。

ネクタイの先と格闘してたから、至近距離で、まともに目が合った。

顔を、無理やり横に向けてやろうかと一瞬思った。

周防を毛嫌いしていると思われている、あたしらしい反応ではある。

でも、できなかった。

「あのさ、緊張するから、こっち見ないで」

素直にお願いする。

周防はひょいっと横を向く。

「こっち向くなって言って、顔、捻じ曲げられるかと思ったのに。・・・何か調子狂うなあ」