卒業してから一度も訪れることのなかった母校。 300メートルに渡って両サイドに聳える銀杏並木。 その真ん中に立ったまま、私はピクリとも動けなかった。 「真理、何してんの?早くおいでよ!先、行っちゃうよー!」 「う、うん。今、行く……」 と、言い掛けたところで、後ろから声がする。 「いいよ、急がなくて!ゆっくり行こうぜ!」 「えっ?」 くるりと振り返ると同時に、カチッとライターの音がして、一瞬だけ暗闇に明かりが灯された。 ――…賢司?