「何、怖い顔してんの?旦那にでも怒られた?」
いつの間にいたのだろう。
賢司がすぐそばに立っていた。
「えっ?怒られるわけないじゃん!留守電なんだから」
「はあ?旦那も夜遊び?」
「……知らない」
廊下の壁に寄り掛かりながら、賢司はポケットからタバコを一本取り出した。
「吸うの、タバコ?」
「あぁ」
ふぅ〜と吐き出した煙が、細い螺旋を描きながら天井に舞い上がる。
「高校時代、吸ってなかったよね?走り込みができなくなるからって!」
「あぁ。あのときはな!
今は27だし、れっきとした大人だから」
あれから10年だもんな……。
私の知らない賢司がいてもおかしくないよね。


