賢司は、私の席からは遠く離れた上座に腰を下ろした。
先生や松本くんに囲まれた、ひときわ賑やかな席だ。
席に着くまで、彼のことを目で追った――…。
初めて見るスーツ姿の賢司は、とても大人っぽかった。
学生服やカジュアルなジーパン姿しか、今まで見たことなかったから。
一瞬で、目が奪われた。
賢司って、あんなふうにスーツを着こなすんだ…。
「ねぇ、注いでくれる?」
「……へぇ?」
横を向くと、木場くんがグラスをこちらに向けていた。
「あっ、ごめん。気が付かなくて」
すぐさま、テーブルの瓶ビールに手を伸ばし、木場くんのグラスに注いだ。
「ストッーープ!!」
「うわっ…!ごめ〜ん!」


