車を走らせること30分。
幹線道路から一本入ると、碁盤の目のように整然と区画された住宅街が広がっている。
その一画に、実家はあった。
ぐるりとツツジの植え込みに囲まれた、茜色の屋根が目印だ。
――着いた。
「お母さ〜ん!いる〜?」
玄関の鍵をガチャガチャさせながら、中へと入った。
結婚したけれど、いまだにこうして実家の鍵を持ち合わせている。
パタパタと、スリッパの音を鳴らしながら、母がやってきた。
「あら〜、来たの?今日は何の用事?」
「えっ、用事がなかったら来ちゃダメだった?――はい、お土産!」
袋に入れられたパンを差し出した。
「いつもありがとうね。さっ、暑いから早く上がって!」
サンダルを脱ぎ、玄関から続く廊下の先にあるリビングに向かった。


