話を聞きながら、簡単に女性に靡かないのも賢司らしいなと思った。
木場くんの言うように、そういうところが、賢司の魅力なのかもしれない。
でも、なんで今さら……?
今さら、そんな話をされても……。
「これ、迷惑かもしれないけど」
テーブルの上に、さっと差し出された白いメモ用紙。
そこには、賢司の電話番号とメルアドが鉛筆で記されていた。
「なんで、こんなことを?」
震える声を押し殺すように、二人を見据えた。
「お節介かもしれないけど、後悔したくなかったら使って!
もちろん、真理ちゃんの立場もよく分かるし、こうすることがプラスになるのか、俺にも分からない。でも、いつまでも心に引っ掛かったままより、自分ではっきりけじめをつけた方がいいよ!」
いつも冗談ばかり言って笑わせてくれる木場くんが、真顔で言うものだから、俄には信じがたかった。
「真理……でもね、これはあくまでも私たちの考えだから無理にそうしろって訳じゃないの。真理が自分で決めていいんだからね」
百合も木場くんも気付いていたんだ……私の揺れ動く気持ちを。
震える手でメモ用紙を掴んだ。そこに映る賢司の名前――。
愛しさと懐かしさと、何とも言えぬ思いが、心の底から込み上げてきた。


