「真理…」
「…なあに?」
「あんまり無理すんなよ」
「えっ…?!」
驚いた私は、少し身体をずらし、目の前にいる賢司の顔を見上げた。
「いいから」
と言われるや否や、すぐさま、賢司の胸に押し戻された。
賢司の言いたいことが何なのか、よく分からなかった。
私の毎日を気に掛けてくれているのか、我慢してしまう性格を汲んで言ってくれるのか……
でも、温かい言葉に変わりはなかった。
私は、間違っていることをしているのかもしれない。
でも……
ただこうして抱き締められているだけで、拓也との日常では忘れてしまっていた優しさに包まれた。
結婚しているけれど、賢司への溢れだす想いに、“時間よ永遠になれ”――そう願わずにはいられなかった。
でも……
現実はそんなに甘くはなかった。


