「ねぇ、そろそろ帰る?」 美沙に言われてハッとした――。 手元の時計を確認したら、とっくに日付が変わっている。 「そうだな。どうする?もう一軒行く?」 みんなの声が、遥か遠くに聞こえる。 濃密な時間は、夢のように過ぎ去っていった。 もうすぐ、賢司との別れの時間が迫っている。 私は、賢司に気持ちを伝えるべき…? でも、今さら何を言ったって無駄な話よね…。 伝えたところで、お互い過去の話なわけだし……。 胸の中で沸き起こる葛藤に、周りの声など全く耳に入らなかった。