季節が夏の終わりを迎えた頃だった。

ケイコの果樹園にカイザーと浩二が訪れた。コントロールルームからさほど遠くないこともあり、彼らがそこここで三人と出くわすことはよくあることだった。

「どうです、進んでいますか?」

相変わらずの笑顔は、今日は一層の穏やかさを持っている。

「ほら、シュウ。ちゃんと挨拶して。」

カイザーに促されるように、小さな少年が顔を出した。

「お、なに、このボーズ。カイザーの息子?」

登は得意の笑顔で少年の頭をくしゃっと撫でた。

「この子はボクと浩二の息子です。まあ、ここでは国全体で子育てをするのであまり誰の息子と言うのも意味のないことですけど。」

「ここは男でも子ども産めるの?」

「チャンスだ、登。章の子を授かるぞ!」

章の期待まじりの突飛な質問に武が乗り、登をカイザーの方へ押して言った。

「いえいえいえ。さすがのアルカディアでもそこまでは色々問題もあるのでちょっと…」

カイザーは浩二の肩に顔を伏せて笑いをおさえていた。