祥子は制服のスカートをにぎりしめて足に力を入れた。言わなければ。

「今までは毎日顔を合わせて近くにいたから何とか付き合ってこれたんだよね。私たち」

「……」

「でも、これからは」
「待って!」

意を決して言おうとした言葉を大悟が遮った。

大悟がゆっくりと腕をあげ、外を指差す。

「芹沢が来た」

大悟の言ったとおり校門から入ってくる芹沢の姿が見えた。

左手には合格の証とも言えるA3サイズの封筒を持っていて、大悟と祥子は「合格おめでとー!」と言いながら芹沢に近寄った。

「やったじゃん芹沢」

大悟が芹沢の肩に腕を回す。

そんな大悟に芹沢は小さく「まあね」と答えた。

これで三人全員第一志望合格。喜ばしいことだった。

しかし、祥子は俯き加減で前髪に隠れた芹沢の顔を覗き込んで心臓が凍り付きそうになった。

足を止めてしまった祥子に構わず肩を組んで歩いていく二人の背中を見つめる。

なんで?

祥子は動揺した。

芹沢の瞳はまるで何も映してないように暗く、そして絶望していた。