サイレント

受付に戻ると今度は鞠がにやりと笑いながら樹里を振り返る。

「何?」

「芹沢くん、泣きながら走って帰って行きましたよ」

自動ドアを指差して鞠は言った。

「鞠ちゃん。嘘はダメだよ」

樹里があっさりとかわせば鞠はつまらなさそうに椅子の背もたれによしかかり、ナースサンダルを履いた足をテーブルの下でバタバタさせた。

「だーって。本当に泣きそうな顔してたんだもん」

「……そ」

「年下もアリだと思いますよ?樹里さん結婚の予定とかないんですよね。あの子が18になってすぐ結婚すれば樹里さんギリギリ20代でゴールインだし」

鞠の暢気な物言いに樹里は呆れてため息をついた。

カルテを整理しながら凝り固まった肩を捻る。

「どこの世の中に高校生、もしくは高校出たてで三十路間近の女と結婚するのを許す親がいる?」

「親より本人の意志が大事だと思いまーす」

「却下」

「えーっ」