「樹里、何やってんの?」
明かりを消して薄暗くしていた部屋のドアを開いて弟のテツが入って来た。
樹里は素早くノートパソコンを閉じてテツを振り返る。
今年大学に入学したばかりの弟は茶髪にした髪の毛を前髪の部分だけ樹里のゴムで結んでいた。
「別に。テツ、今日合コンなんじゃなかったっけ」
「ん?んー、何かしんないけど中止んなったみたい」
「みたいって…まあいいけど、とりあえず出てってくんない?」
樹里が手で追い払うフリをするとテツは心底だるそうな歩き方で部屋から出ていく。
廊下に出てからテツが「あ」と思い出したようにして樹里を振り返った。
「切っちゃダメだよ」
そう言ってテツが自分の手首を指差していた。
「…おやすみ」
見当外れな返事をして樹里はテツに手を振った。
部屋のドアが閉まる。
テツが樹里を心配してくれているのは知っている。
テツだけじゃない。母も父も、弱い樹里を心配している。
でも、できない約束を口にすることなんて樹里には無理なんだ。
明かりを消して薄暗くしていた部屋のドアを開いて弟のテツが入って来た。
樹里は素早くノートパソコンを閉じてテツを振り返る。
今年大学に入学したばかりの弟は茶髪にした髪の毛を前髪の部分だけ樹里のゴムで結んでいた。
「別に。テツ、今日合コンなんじゃなかったっけ」
「ん?んー、何かしんないけど中止んなったみたい」
「みたいって…まあいいけど、とりあえず出てってくんない?」
樹里が手で追い払うフリをするとテツは心底だるそうな歩き方で部屋から出ていく。
廊下に出てからテツが「あ」と思い出したようにして樹里を振り返った。
「切っちゃダメだよ」
そう言ってテツが自分の手首を指差していた。
「…おやすみ」
見当外れな返事をして樹里はテツに手を振った。
部屋のドアが閉まる。
テツが樹里を心配してくれているのは知っている。
テツだけじゃない。母も父も、弱い樹里を心配している。
でも、できない約束を口にすることなんて樹里には無理なんだ。

