「もったいないな……」

この身体も、唇も、瞳も、全てあの子供のためにあるだなんて。

樹里ならもっと相応しくて、幸せにしてくれる男等いくらでも掴めるだろうに。

樹里だっていつまでも若いわけじゃない。

30、40、50と歳をとった時にあの子供が他の女に心を動かさないなんてこと、あるはずがない。

テツはテーブルの上の飲みさしにしてあった焼酎を拝借しながら樹里の寝顔を眺めた。

これが、この樹里があの子供とどんな風に過ごしているのか、想像も出来ない。

今でも必ず週に一度はあいつと会っているようだし。

「こんなに身も心も擦り減らして……それでも一緒にいたいほどあいつが魅力的なわけ?」

温いアルコールが血液に溶け出す。

「あんな奴、その辺にいくらでもゴロゴロしてんじゃん。別に特別美少年でもないし、人目をひくわけでなし」

見た感じ、女好きにも、ちゃらちゃらしたヤリたいだけの能無しにも思えない少年だった。

向こうから樹里にちょっかいを出したようには見えない。

だとしたら先にハマったのは樹里の方。