「ふうん。じゃ、よろしく」

他には特に話すことのない一はそう言って加藤に背を向けた。

瞬間、背中をドンッと叩かれた。

「これでも食べてせいぜい苦しんでなよ!!」

驚いて首だけ振り返ると、顔を真っ赤にして怒った加藤がスイートポテトの入った紙袋を一の顔にたたき付けた。

見た目よりかなり重量のあるそれはまともに鼻を直撃し、よろけた一は階段に膝をつく。

「じゃあまた学校でねっ!」

そう言い捨てて加藤は一に背を向けた。

一は落ちた紙袋を拾うと慌ただしく階段を駆け降りていく加藤を唖然と見送った。

まるで嵐のような女だ。

突然やってきて勝手に怒って帰って行く。

何となく相沢に似ていると思い、思わず笑ってしまった。

「変な奴」

紙袋の中の箱を開いてみるとそこには狐色をしたスイートポテトが並んでいた。

今は胃が甘いものをうけつけないので、後で樹里が来た時に食べさせてやろう。

そう思い、また蓋をして部屋に戻った。