「あーりーすチャン!」
「…………軌条くん…」



読書を始めたばかりだというのに、空気を読まず、飛び込んできたのは、お得意のポーカーフェイスを浮かべたお坊っちゃま、軌条奈留だった。



「何の用?…ですか」
「あはは、敬語はいらないよォ、僕ら同級生じゃないかぁ〜」
「…………何の、用?」
「…相変わらず冷たい女」



亜理子に媚びても無駄だと確信した奈留は本性を出して亜理子の机の前の席にちゃっかりと座り込み、亜理子を見つめる。



「…………な、何?」



視線に耐えられなくなったのか、亜理子は伏せていた顔を上げて問い掛けたが、答えの代わりに、面白い話を耳にした。



「亜理子チャンさぁ、ココの学校の七不思議…知ってるよねぇ?」



にっこりと可愛らしい笑顔とは裏腹に、その口から出たのは、最も亜理子が嫌う怖い話だった。彼女は耳を塞ぎながらも、問い掛けられた質問に答える。



「…知ってる、けど…」
「だよねェ!んじゃさぁ、今日どうせ夜の学校探検行くじゃーん?」
「………うん」



亜理子はとても嫌な、予感がしながらも、次に出てくるであろう彼の言葉を耳を軽く塞ぎながら待った。



「…確かめて、みよ!」



嫌な予感は的中した。