「なあなあ、亜理子」
「………………何よ」
「お前さあ、どうせ放課後ヒマだろ?」



長い髪を2つに縛り直しながら、少女──如月亜理子(きさらぎ ありす)は自分の机の前に立ちはだかる幼馴染みの男子、坂上真樹(さかじょう まき)を見上げる。



「何その言い方。まるでわたしがいつもヒマしてるみたいな…ヒマだけど」
「んじゃさ、夜の学校探検しねえ?」
「は?」



子供じみた真樹の話に、彼女は耳を疑った。もう一度聞き返せば、同じ言葉で返される。最近の男子は、良くもまあそんな楽しみを見つけるなあ、と亜理子は感心した。



「行く、だろ?」
「……人数は?」
「オレと亜理子含めて四人」
「あと二人…だれ?」



周りを見渡しながら真樹に問い掛ければ、真樹は少し背を低くし、小声で答えた。



「まず、軌条奈留(きじょう なる)」



彼が顔を前に出し、促した先には、お金持ちのお坊っちゃまで、金髪でスカイブルーの瞳を持つ、ハーフの男子。



「で、青樹波奈(あおき はな)」



次に真樹が紹介したのは、教室の一番後ろ、窓辺の席に座る学校一の不思議ちゃんだった。