「で、どうして仮病使ってんだ?」
クラスが違う良一からすると、普段元気な私が保健室をお借りしているのがよほど珍しいようで。
事情を知らないからそりゃそうだな。
私は起き上がり、ベッドの上に座ると、良一にも傍にある椅子に座るように促した。
「ねぇ、樋口飛鳥、って知ってる?」
「知ってるも何も、目の前にいるじゃん。」
「いやいや、私じゃなくて。アイドルの樋口飛鳥。」
「知らね。」
「彗星の如く現れた、16歳のスーパーアイドルなんだって。」
「へぇ~。」
良一も知らないとは。
私も見た事無いし。
ホントにスーパーアイドルなのかな?
「そのスーパーアイドルがご存知の通り、私と同姓同名でね。クラスの男子達が比較してうるさいから保健室に避難してたわけ。」
「なるほどねぇ~。」
「凄く可愛いらしいよ。」
「ふ~ん。」
それほど関心がないらしい。
それだけで私の心はかなり軽くなった。
「ま、見た事無いけど、アイドルだから凄く可愛いのだろうな。男っぽい明日香とは大違いなのは何となく分かるよ。」
「一言余計なのよ!」

