偽りだけの城





「理事長の彼女現る…」



「っはぁ!?」



まさかとは思うけど、善くんって瞬間移動なんて使えないよね?


今飛んできたように見えたのは僕の幻覚だよね…



善くんが恋愛系の会話にやたらと敏感なのは今に始まったことじゃないけど。


やたらとグイグイ来るから怖いんだよね。



そのやる気を普段に回してくれると、僕的には色々な意味で助かるんだけど…


庵くんだってそう思ってるはず。


ソファで今にも寝そうな宮くんだって多分そうだよね。



善くんが、外の女の人を見て自分の感想を述べている。

可愛いじゃん。とか、あれ年どんくらいなんだろ…とかとか。


まさか理事長の彼女さんを盗ろうなんて考えてないよね。



そんな勝手すぎる想像を聞きながら、僕はおーちゃんの冷静さに驚いていた。


みんな窓際に集まって外を見ているのに、唯一おーちゃんだけ、洗った食器を片付けていた。


もはや主婦だよ…