此処に来てから暫く経つのに、落ち着かない様子の雪火。
ずっと愛想笑いを浮かべ続けている。
その様子を見て楽しんでいる朔。
さっきまで喧嘩してたくせに、完全に朔の勝利になっている。
「忍ちゃんって言うんだ~、よろしくね!」
「えぇ…」
「握手~だよっ」
素っ気ない態度をとっているのは自分でも理解している。
わざとなんだから。
それなのに笑顔で手を握ってくる。
男を相手にしているように感じないのは、この容姿だからなんだろうか。
奥田瞳…聞いたことのある名前だとは思っていたけど。
ぶんぶんと手を振られて正直振り払ってやりたいけど…
やっぱり男に見えないからやめておく。
外見で得するってこのことね。
「…鬱陶しい」
いい加減挙動不審に苛々してきた。
「暗い空気振りまかれると迷惑。いつも言ってるはずよ」
「…」
「少しは手加減してやれ、なんか哀れだわ」


