「あーもう、俺の前で吸わないで下さいよ!」

「辞めちまえ、禁煙なんか」


サクにわざと見せつけるように、俺はタバコを口の端で咥えた。


「そういう訳にいかないんすよ。嫁に怒られるんで」


火を付けようと口元に近付けたジッポを
何となく下ろす。


「いつだっけ、子ども生まれんの」

「来月っす。」

にい、とサクが笑う。


「へぇ…お前も父親か」

「ハイ。楽しみです」



緩みきった笑顔のままサクが見つめる携帯。
その待ち受け画面には、随分膨らんだ腹を抱えた奥さんの写真が設定されていた。