東京から見て西の外れに位置するこの田舎町に、俺は住んでいた事がある。

大学時代の話だから、もう十年も前だ。


だんだんと夜に染まっていく街並みを
当時の彼女と、ここから飽きもせず眺めていた。



『マルボロは、タカヒロの香りだね?』



惰性で吸っていたマルボロを、半ば意地になって吸い続けているのは

彼女のその言葉がきっかけと言ってもいい。