そして、試合の時間になった。


俺たちがコートに入ると、集まっていた観衆の声が響き渡る。


普段からOBの人達は練習を見に来てるから、ヘタなとこは見せられない。


よく見れば、ここの出身だっていうJリーグの選手も何人か見に来てて、OBのおじさん達と話てる。


すげぇな…。

マジかよ。



これ、マジで失敗なんてできねぇよな。



女子の耳にキーンと響く声も毎日のことだから、あんまり気にしない。



そんなことより、だ…。



「…いねぇな」



たくさんの観客を見回しても、妃那の姿がない。


道に迷ってる?

それとも、来る途中で変な男に絡まれてるとか…。



試合に集中しなきゃいけないことは分かってるのに、俺の頭の中は妃那のことでいっぱいだった。