立ってフェンスに掴まりながら見ていると、龍崎高校の選手がコートに入ってきた。
目を凝らして綺羅くんの姿を探す。
「あ…」
いたっ!
間違えるはずがない。
綺羅くんは白のユニフォームを着て、軽くボールを蹴り合いはじめる。
初めて見た…綺羅くんのユニフォーム姿。
すごくカッコいい。
「綺羅くーん!!」
「キャーー!!こっち見てー!!」
急に大きな悲鳴とも呼べる声が聞こえてきて、思わずビクッとした。
わっ…。
あの女の子達、綺羅くんを見に来てたんだ…。
そう、だよね。
だってあんなにカッコいいもん。
好きにならないわけないよ。
綺羅くんはすっごくモテる。
それは分かっていたことなのに。
どうして、こんなにも胸が苦しくなるの…。
綺羅くん、私はここにいるよ。
ちゃんと見てるよ。
だから、私に気づいて…。
綺羅くん。
綺羅くん。
「綺羅くん…」
誰にも聞こえない声で、小さく呟いたその時。
なんと、綺羅くんがこっちを振り向いた。
え…うそ。
聞こえるはずがないのに。
綺羅くんは私に向かって、軽く手を振ってくれた。
どうして…。
…どうしよう。
すごく嬉しい。