「間に合うかな」




なるべく早歩きで駅に向かう。



どうしても、この電車でなければいけない。


というより、この時間でなければならない。



「ま、間に合った…」




駅に着いて改札を通り、ホームへ向かう。


ホームにつながる階段を降りてすぐ左側を見る。



「あ…」




その瞬間、私の胸がドキドキと音を立て始める。



いた…。




私のいるホームと反対側のホームにいる3人の男の子達。



1人は坊主に近い短髪の男の子で、もう1人は癖っ毛の茶髪の男の子。



そして…。




程よく切りそろえられたダークブラウンの髪と、整った顔立ちをしたもう一人の男の子。


二人の友人と楽しそうに笑う彼は、とても爽やか。




私の、好きな人。




私がこの時間の電車に乗るのは、他のでもない、彼をひと目だけでも見るため。




名前も学年も知らないけれど、どうしようもなくその笑顔に惹かれたんだ。



彼は逆方向の電車だから、ひと目見られるのは電車がくるまでのほんの数分だけ。


でも私にとってその数分は、一日の中で1番幸せな時間。