「んー…わかんねぇな…」
「どうしたんですか?」
悩んでいる彼をみて、勇気を出して話しかけてみた。
図々しいかな…。
関係ない私に、突っ込まれるのは迷惑だったもしれない。
話しかけた後に後悔した。
けれど、
「見舞いの差し入れなんて持って行ったことないからさ。何がいいのか分かんねぇんだよ」
特に気にした様子もなく話してくれる彼を見てホッとしたんだ。
お見舞い…。
果物なら何でもいいと思うんだけどな。
「リンゴとか、この時期ならイチゴとかどうですか?あとは…グレープフルーツも美味しいですよね」
あ、想像しただけで美味しそう。
食べたくなっちゃった。
私も買って行こうかな。
ふと視線を感じて横を向くと、彼がジッと私を見ていた。
な、なんだろう?
私、変なこと言っちゃったかな!?
「ど、どうかしました?」
「いや…。じゃあ、無難にリンゴにするわ」
やっぱりお見舞いにはリンゴだよね。
…あれ?
リンゴを取る彼の手に、痛々しい傷があった。
ひっかかれたような、そんな傷。
傷の近くはドス黒い色になっていて、内出血を起こして腫れている。
微妙に血が出ているから、最近できた傷だと思う。
見ているだけでこっちが痛い。
「あの、私買い物してきますね。ほんの少し外で待っていてください」
彼の返事を聞く間も無く、私は急いで買い物をした。
袋に商品を詰めて、待っていてくれているであろう彼のもとに向かった。



