「またねー」


「また明日ー」




いつの間にか放課後になっていて、クラスの子達が帰っていく。



あれ、奈緒ちゃんいつの間に帰ったんだろう。



教室にひとりになった私は、意味もなくぼーっと椅子に座ったまま横を向いた。



グラウンドでは野球部やサッカー部が準備のためにせっせと動いている。



サッカー…。



彼も今頃部活で練習してるのかな。


彼の学校はサッカーの強豪として有名だ。


ずっと全国大会に出場している学校で、サッカー部に入るために他県から入ってくる子も多い。



同じ駅の電車から乗ってるってことは、彼は私と同じ地元の人だとは思うんだけど。



そろそろ帰ろう。


鞄をもって席を立ち、校舎を出た。


まだ少し冷たい風に当たりながら、私はゆっくり駅に足を進める。



駅についてホームに出ると、私は無意識に左を向いてしまう。


これはもう癖と言っていいかもしれない。


彼がいるはずもない駅でも、私は左を向いてしまうんだ。



向こう側のホームを見ながら思う。



どうしたら、君に気づいてもらえるんだろう。


どうしたら、この想いは届くんだろう。



線路ひとつ分の壁を超えるには、どうしたらいいのかな。




姿が見たい。


笑顔が見たい。


声を聞きたい。


彼の目に、映りたい。




今はそれだけでいいの。



だからどうか、届いてほしい。


この想いが、向こう側の君に届きますように。