あれは、中3の冬だったっけ?

俺と悠里はこの小さな島には一つしか高校がないから、そこに行くことはもう決まっていたため、高校受験と言うものがないに等しかった。

そのため、全国の俺らの同年代が頑張っている最中、俺らも大きな大きな暗闇の中でもがいていた。

そう。

優愛が自殺未遂をしたから。

あの事故から優愛と連絡を一切とっていなかった俺はそれを悠里から知ることになった。

お前は動揺してた。

涙こそ流さなかったが、いまにも泣きそうだった。

体が震えてた。

だけど、俺にそれを伝えようと走ってきた。

俺らはそのあとすぐに東京に向かったよな。

だけど、俺は優愛との面会を許されず、許された悠里が俺のとこに戻ってきたとき、お前はそこではじめて泣いた。


『優愛の中に……もう、私は生きていない』


そういって、涙を流したよな。

なにもしてやれなかった。

ただ、お前の頭を撫でてやることしか俺には出来なかった。

それから数日後、俺らは島に帰った。

以前と変わらないように思えた。

それはきっと、俺の勘違い。

悠里、お前は違ったよ。


『陽向』


そういって、俺のそばにいることが多くなった。

別に俺は苦じゃなかったし、どうでもよかった。

その頃俺は、頭の中が優愛のことで一杯だった。

どうやったら、あいつがあのときみたいに笑って過ごせるんだろう。

どうやったら、あいつが幸せになってくれるんだろう。

それだけだった。

なのに……


『私ね……。もう、嫌になっちゃった』


お前は違ったよ、悠里。


『優愛のこと一番わかってるのは私だと思ってた。

だけど、ちがったんだね』


そういって、ポロリと溢した言葉。

まるで、涙が出るようにそう、悠里は呟いた。


『……ちがわねぇよ』


俺はあのときそういったんだっけ。

なんの根拠もないのに、よくあのときそう言えたなって、今になって思う。