「いやぁあああっ!!!!!」


嫌だ嫌だ。

こんなの私じゃない。

私はこんなの知らない。

知らなくてよかった。

こんなこと思い出したくもなかった。

助けて……誰か。

お願い_____助けて。


______フワっ……


優しい香りがする。

知ってる。

私、このにおい知ってる。


「きん……もくせい」


自然と涙が出た。

あまりにも優しすぎる匂いだから。

涙が止まらなくなった。

このにおいはあの人のにおいだ。


「これね、陽向君が置いて行ったのよ。優愛はこのにおいが好きだからって」


お母さんを見たらお母さんは優しく笑ってた。


「陽向……」


小さな台の上にのっている金木犀の竹彩香。

それを手に取って鼻に近づけた。

思いだす。

あの優しい笑顔を。

大好きだった、あの人のことを。


「優愛、あなたはもう弱くない」


そういって、お母さんは私の前に1枚の航空チケットを出した。