『____3時28分。橘佳代子(タチバナ カヨコ)さんお亡くなりです』


医者の無機質なその声が聞こえたその時、陽向。

あなたは泣かなかった。

喚きもしなかった。

ただただ、その白いベッドの横にあなたは立っていたよね。

私はその様子を扉の所から見ていた。

陽向のその背中はとても小さく見えて、泣いていないのに泣いているよう見えた。


『あ、優愛。目覚めたんだ。よかったな』


陽向は私がいるのに気づくとそう言って笑っていた。

その笑顔ほど悲しい笑顔を私は見たことがない___________。


ごめん。ごめんね、陽向。

私はあなたから大切なものを奪ってしまった。

あなたの宝物を私が奪ってしまった。

私が弱いばっかりに、ごめんなさい。


そんな顔をさせてしまって_____ごめんね。





「_____……ぁ……優愛」


意識が朦朧とする。

優しい声が聞こえて目が覚める。

天井が白い。

ここは____どこだろう。


「優愛」


右から声がする。

首を少し右に向ける。


「……ひな、た?」

「ああ、そうだ。どうした?悪い夢でも見たか?」