泣いて、笑って強くなれ


やけに学校が静かだ。

私の靴音が廊下に響く。

自分の教室の階まであがる。

私の教室は2年6組。

廊下の一番突き当たりだ。

嫌なんだよねー。

こんなときの、あの教室までの道のりが。

他のクラスの人たちに私が遅刻してきたのバレバレになっちゃうし。

私はできるだけ、足音をたてないようにしながら、自分の教室へと向かった。

扉の前にたつ。

中では担任が何かいっているのが分かる。

私はそっと、できるだけ音をたてないようにその扉を開く。

ちょっと開いただけで、クラスの皆は反応したようで、こちらを見てくるのがわかった。

それで、私が来たことに気づく担任。


私を見た瞬間、「おお、鮎沢遅かったな。寝坊か?まぁいい。早く座れ」なんていって、私が席に早くつくようにいう。

私は、小さく返事をして自分の席へと向かう。

私の席は一番窓際の、前から二番目。

一見いつもの私の机だ。

漫画みたいに、落書きなんかはない。

紗英たちも、そこまで、幼稚なことはしなかったのかな。

私は一先ず席につく。

机の中も一応チェックする。

異状なし。

教科書もパラパラとめくってみたが、いじられた形跡はない。

おかしーな。

紗英なら教科書破るとかやりかねないと思ってたのに。

そんなことをしているまにHRは終わったようで途端に教室はざわめき出す。

ちらりと紗英たちの方をみると、紗英と里咲は何もなかったのように二人で話している。

もしかして、

もしかしてだけど、昨日のこと二人は怒ってないのかな?

いや、ありうるかもしれない。

あの二人だ。

寝たら忘れるタイプかもしれない。

私はゆっくりと二人のもとへと近づいた。

すると、紗英が私に気づく。

私は一瞬作り笑顔でにこりと笑う。

いつもなら、ここで「あ、優愛。おはよ」とでもいってくれるんだ。

うん。

いつもなら。



「ってかさ、昨日のあれめっちゃ面白くなかった?」


あれ?

紗英は私を見てみなかったふりをして、里咲にそう話をふる。


「あー、あれね。まじ、ウケたね。ってか、今さらだって感じだよね」


里咲は紗英の様子で気がついたのか、里咲も私の方をちらっと見てから視線をそらした。