「ほら、早く降りてらっしゃい。もう朝食できてるから」
お母さんはそういって、私の部屋を出ていった。
私はというと、ハイスピードで着替えを済ませ、一階に降りてつくえのうえにおいてあった食パンを口にくわえる。
まるで漫画の世界だけど、本当に急いでるとき、人間はやはりこうなってしまうんだと思う。
「いっへひまーふっ!(いってきまーすっ!)」
私はそういって家を出て駅まで駆け出した。
今日と天気は気持ちがいい。
気温も丁度いいし、風も押し風だ。
やっぱり、秋晴れは心地がいい。
私はなんとか電車に乗り込み、丁度空いていた席に座り一度落ち着く。
遅刻にはかわりないが、多分一時間目の英語ははじめから出れるだろう。
ガタンガタンと電車の揺れが心地よい。
昨日の今日。
正直学校に何ていきたくないのが本音だった。
だけど、寝坊したせいでそんなことを考えるまもなく家を飛び出してきてしまった。
外から見える景色からして、あと5分ほどで学校近くの駅に着いてしまう。
このままサボるのもいいかもしれない。
このまま電車の揺れに身を任せるのもいいかもしれない。
「……はぁ…」
気がつけば私は校門の前に立っていた。
私ってきっと根は真面目なんだよね。
思わずため息がこぼれてしまう私。
でも、どうせいつかは立ち向かわなきゃいけないわけで。
それから今は逃げるか逃げないかが問題なわけであって。
ここまできたら逃げるわけにもいかないよね、うん、わかってるよ。
私は重い足を一歩進めた。
私はいつも通り玄関に入る。
どうか、内ばきが無事でありますように。
そう願いながら、私は靴箱をあける。
そこには、いつもと変わらない私の靴。
ああ、よかった。
てっきり泥々になってるんだと思った。
さすがに、紗英そこまでしなかったか。
よしよし、中に押しピントかも入ってないよね?
うん、いつも通りだ。
私は少しの安堵に包まれて、靴を履いて、自分の教室へと向かう。
きっと今はHRの最中かな。



