『優愛ちゃん。どうしたの?こんなところに傷作っちゃって……』

「……ちょっと、陽向と喧嘩したの」


私がそう拗ねたように言うと、女の人は優しく私の頭を撫でてくれた。


『そう。喧嘩したの。何で喧嘩したの?』

「ばあちゃんが切ってくれたスイカを、陽向が私が少し油断した隙に、大きい方を食べちゃったの」

『そう。ふふ、陽向らしいわね』

「それでね、私怒ったら、陽向も怒って掴み合いになっちゃってね、それで私がちょっとバランス崩して倒れちゃってね。

その時にほほのところをちょっと切っちゃったの」

『そう。陽向はいまどうしてるの?』

「うんとね、多分今うちのばあちゃんに怒られてるよ。ざまあみろだ!」

『そう。それなら私の出番はないわね。

じゃあ、私から優愛ちゃんに人生のアドバイス』


そういって、ふふっと笑った女の人。

私はなんだろうと首を傾げる。


『優愛ちゃんは、自分が嫌なことは相手にもしないってことはわかるかな?』

「うん。ばあちゃんが私によく言うからしってるよ!」

『そうね。じゃあ、もし優愛ちゃんの目の前でいじめられている子がいたらどうする?』

「うーんとね、私が助けてあげるの」

『どうやって?』

「んー……。いじめている子達にやめるように言う!」

『それでも、優愛ちゃんの話を聞いてくれなかったとしたら?』

「え、うーんとね……。私がそのいじめられている子を守る!」

『そしたら、優愛ちゃんがいじめられるかもしれないよ?』

「私なら平気だよ?」

『どうして?』

「だってね、_____________」


私がそういうと、女の人は少し驚いた顔をしてから、にっこりと満足げに笑った。


『優愛ちゃんはもうわかっていたのね』


そういって、優しく笑ってくれた。

窓からふわっと吹いた風。

微かに花のにおいをのせてやってくる。

なんだろう。

とてもいいかおり。


『金木犀ね。ふふ、秋の香りね』


そういって、窓の外をみた女の人。

よく顔は見えなかったけど、声のトーンからして、少し切なげだった_______________。