「ばあちゃん。もう、食べないの?」

「ああ。ごめんねぇ……」

「うんん。いいよ、じゃあなんかあったら呼んでね?」

「ありがとうね、優愛ちゃん」

「うんん。じゃあ私行くね」


私はばあちゃんのいる部屋を出て、襖をゆっくりと閉める。

ばあちゃんはお粥を一口しか食べなかった。

顔色もよくはない。

私が料理を持ってきたとき、ばあちゃんはなにかを待っているかのように、窓をじっと見つめていた。


「ばあちゃん。食べたか?」


居間にいくと、陽向が我が家のようにくつろぎながらこちらを見る。


「うんん。一口しか食べなかった」

「そっか……。もう、夏休みも終わるしな」

「……そうだね」


私は机の上に余ったお粥をおいた。


「お前、お粥だけは作るのうまいのにな」


そういって、陽向はスプーンをとってあまりのお粥を一口口にいれた。


「失礼な。チャーハンも前よりはましになったし」

「まぁ、はじめがひどすぎたもんな」



そういって、わははと笑う陽向。

ここにきてから陽向はいつもそうだ。

陽向は私が一人で悩まないように、こうして私のそばにいてくれる。

店の仕事とかの合間に、こうしてこのいえにやってくる。

陽向にとって、もしかしたらこの行為は当たり前のことなのかもしれない。

幼馴染みがピンチだから力になるのが当たり前だ、とかそんな風に考えているだけなのかもしれない。

だけど、私にとったらこの状況で陽向がここにいると言う事実はとてもありがたかった。

きっと、私一人だったら胸が押し潰されそうだったと思う。



____チリーン


縁側の風鈴が風に揺れて音をならす。

私はそれを目を細めて見ていた。


「なぁ、優愛」

「……ん?」

「昔、ここにお前がいたときのこと覚えてるか?」

「……え?」


私はそういって、陽向をみると陽向はお粥を既に平らげていて、こちらをじっとみつめていた。