そして、陽向が止まった先は……

扉の前。

確かこの奥には居間があったはず。

陽向はなんの躊躇もなく、その扉を開く。

そこは、やはり私が思ったとうり、居間があった。

陽向はそんな誰もいない居間に足を踏み入れた。

私も陽向に続いてその空間に足を踏み入れる。

その空間はなんだか懐かしかった。

畳み四畳くらいの空間。

その中央に置かれた少し古びた味のあるちゃぶ台。

ちゃぶ台から見える景色は、見覚えのある縁側。

そこには夏らしい風鈴が掛かっている。


「座れよ」


陽向の言葉にはっとなって、現実にもどってくる私。

気づけば陽向がお茶を持ってちゃぶ台の前に座っていた。

私も陽向に言われた通りにとりあえず、ちゃぶ台の前に座る。

陽向と私が向かい合うようなかたちになってしまった。

何だか妙に気恥ずかしい。

お見合いみたいだし。

陽向のほうをちらりとみれば、視線が重なってしまって私は慌ててそらした。

なにこれ、なにこれ。

この居心地の悪い空間。

早く抜け出したかった。


「優愛」


静かな空間に響く陽向の少し掠れた声。

顔をあげれば陽向は俯いていた。

なにこの、重たい空気。

久々の再会だっていうのにさ。


「ばあちゃん、もう長くないんだ。この夏、越せるかもわからねぇ」


え……。

今、なんて……。

嘘、でしょ?