「陽向が……好きです」


そういった瞬間、なにかに私は包まれた。

それが、陽向の腕だと気づいたときにはもう、私の目からは涙が溢れた。


「かっこつけやがって……」


陽向の声が震えてる。


「本当は嬉しかった。悠里のことお前、忘れてたから俺のこともてっきり忘れてるって思ってた。

だけど、お前、覚えてた。本当はあの時死ぬほど嬉しかったんだ」


そういって、陽向は優しく私の頭を撫でた。

ねぇ、陽向。

私もずっと不思議だったの。

なんで、陽向のことだけは覚えてたんだろうって、ずっと不思議だった。

だけど、いま答えが見つかった。


「私が陽向を覚えていたのは、きっと陽向が私の一部だったからだよ」


あなたがいなければ、きっと私はいなかった。


「私が私でなくならないように、きっとおばさんが陽向の記憶だけ守ってくれたんだとおもう」


そういうと、陽向は優しく微笑んだ。


「母さんはお節介だからな。そうかもしれないな。

だけど、お前に記憶が戻ったときは、正直すっげぇ怖かった。お前、俺のこと完全に拒絶するって思ってたから。

でも、お前はこうやって俺の前に現れてくれた。もうごめんなんて言わねぇ。

ありがとう、優愛」


その言葉に涙が止まらなかった。


「それと、俺も優愛のこと好きだから。付き合えよ、な?」

「……っ!」


え、嘘。

こんなことって……。

驚きすぎて声もでなかった。

こんなこと予想もしてなかった。

ただ私は自分の気持ちを伝えるので精一杯だったから。


「返事は?」


陽向が少し意地悪げに私の顔を除きこんでくる。

自分の顔が赤くなっていくのが自分でもよくわかった。