私は手に持っていた写真に目線を戻した。

そこにはもちろん私がいた。

陽向がいた。

悠里もいた。

みんなみんな、笑ってる。

こんなに、キラキラな笑顔を浮かべてる。

おばさんもいた。

おばさんと、私と陽向でカメラに向かってピースサインをしていた。

無邪気に笑ってるよ、私。

楽しそうだ。

楽しかった。

ずっとずっと、こんな日が続けばいいって思った。

私はそんな写真を1枚づつ、1枚づつアルバムにおさめていった。

それはまるで、私の記憶の旅をしているようで、胸が暖かくなった。

こんなにも、楽しかったことを私は忘れていたんだ。

こんなにも大切なのに。

私はあのときすべてを捨てようとしてたんだね。


「……ごめんね」


ごめんね、過去の私。

ごめんなさい。

本当は忘れたくなんかなかったよね。

私が弱かったばっかりに、ごめんなさい。

もう捨てたりなんかしないから。

ちゃんと、向き合うから。

ずっとずっと、逃げてた。

向き合うことから逃げて逃げて、捨ててしまったこともあったけど、ちゃんと拾っておいてくれていた人が私の周りにはいたんだね。

こんな風に笑えるかどうかはわからないけど、努力してみるよ。

私の頬を涙が伝った。

思い出す。

あの夏の日。


『これから二人はどんどん大きくなって、色々な人に出会うと思う』


おばさんの病室で私と陽向は並んでおばさんの話を聞いていた。

なんでこんな話になったのかまではよく覚えていないけど、私たちは幼いながらも真剣にこの話を聞いていた。


『そんで、たーくさんの経験をすると思う』


そうだね。

今日まで私はいろんな人に出会ってきた。

たくさんの経験も積んできた。


『だけど、これだけは忘れないでほしい

”人間、泣けるということは、笑えるという証だからね”』


涙が出たら、それは悲しみの合図じゃない。

次笑うための準備。

そうでしょ?おばさん。

いまならわかるよ。

悲しみを知らない人は喜びも知らない。