『陽向には分かんないよ』


そういって、悠里は空を仰いだ。

あのときの時間帯は確か夜。

星がきれいに見えたっけ。


『陽向はさ……。

優愛のこといまでも好きなの?』


余りにもドストレートな質問がいきなり飛んできたもんだから、俺はビックリして、すぐには反応出来なかった。

その間に、悠里は再び口を開いた。


『正直なとこ、私はね。

もう終わりにしたいの』

『……は?終わりってどういうことだよ』


ここでようやく俺の口が動く。

だけど、悠里は少し動揺する俺をよそに、冷静だった。


『優愛は私を忘れた。

なら、私も優愛をなかったことにしたい』

『……お前、それ本気でいってのかよ』


最初は信じられなかった。

今だけの感情なのかと思ってた。

あんなに仲良かった二人が、こうも脆いものだって信じたくなかった。


『……苦しいの。もう、耐えられないの』


そんな言葉と共に、悠里の目から涙がこぼれ落ちるのを俺は見た。


『出来れば、優愛の記憶を取り戻させたい。私を思い出してほしい。

だけどっ……。そうしたらきっと、優愛はまた同じことを繰り返してしまう。あの過去を優愛はまた背負わないといけなくなる。

なら……思い出さない方がいい』

『……悠里……』

『あとね、本当は一生言わないでおこうって思ってたんだけどさ。

今が言うべき時だと思うの』