それでも神田くんが好き

私と紗羅はみんながいる場所へ向かった。





「あれ?」





さっき、みんながいたはずの場所には誰もいない。






「桜庭さん、松田さん」



後ろから誰かの声がして
振り返ってみると
そこには、担任の佐藤先生がいた


「先生!!みんなはどこに行ったんですか?」



「今は休憩中。20分までだからその辺回ってきなよ!」



私たちの背中を軽く押しながら話す







相変わらずフレンドリーだなぁ。佐藤先生は。






「それじゃぁ、萌いこうか!」


「うん!」






私たちは、建物を一周することにした。






「ちょっと紗羅、ここの食堂すごくない?」



「わ、本当だ!!」





高そうな食器、テーブル、イスがいっぱい並べられていた。
すごくピカピカしてて綺麗




「私、ここ気に入っちゃった!」





「…」







「ねぇ聞いてる?紗羅?」








「…萌」





「ん?」






急にワントーン低くなった紗羅の声は
なにか、あったのかな?って感づかせる







「なに?」






嫌な予感がした。






紗羅は、同じ方向をじっとみて姿勢を崩さない。





「萌みて」




すこし見るのをためらったが
紗羅の言われた通りにその視線の先をみるとそこには神田くんとなっちがいた。




神田くん…。
そりゃあ、付き合ってるんだもん。
一緒にいてもおかしくないよね。




その言葉とは裏腹に
胸が張り裂けそうなくらい痛くて
心臓が速くなって
息もあらくなる


痛い。痛いよ。



そこにいた神田くんはさっきまで私と話してた神田くんとはすごく違った。






「…」






顔を赤く染めながら
はにかんだ笑顔をなっちにむけている



こんな神田くん見たことないよ…。






なっちと話す神田くんは
恋してるなって一目で分かるもん…。





換気のために窓を開けてたみたいで2人の話し声もたびたび聞こえた




……神田くんの声すこし高くなってる。
きっとなっちと話すの照れるんだな。




ズキ…。



ズキ…。

本当に胸が張り裂けそうだよ






「紗羅もう行こう。私見てられない」




「…うん」





小声で話してるから
神田くんとなっちには聞こえていないみたい





速くここから去りたい
速くここから去らなきゃ






「ねぇ光。バスで萌を抱きしめてたって友達が話してたけど本当?」







“萌”その言葉がなっちから飛び出してきたとき
口から心臓が出そうになる程びっくりした




え、私?!
神田くん、私のことなんて言うんだろう?
私のことどう思ってるんだろう?




速く去らなきゃいけないのに足が動かない






「どうして黙ってるの?」




なっちは悲しそうな声で神田くんに問いかけた。




私もしりたいよ。
どうして抱きしめたの?
いくら私が泣いてても普通抱きしめる?そこまでしないよね?
どうして?



いくら神田くんが私のことなんとも思ってないって分かってても少し期待してしまう。


私の鼓動がだんだんペースをあげていく。




ドクン…
ドクン…
ドクン…
ドクン…
ドクン…








「泣いてたから放っておけなかった…。ごめん」






神田くんの口から出た言葉は
私の期待してた言葉とは程遠くて



胸に何かが落ちてきたように重かった






…やっぱりそれだけだよね。
変な期待しちゃった。
バカだな。私。




そんなの、分かってたのに。




「…そっか。光は優しいもんね」




そうだよ。それだけなのに。
本当バカ。
涙が溢れてきそうだった。
でも
泣いてしまったら負けた気がするから
下唇を思い切り噛んで我慢する。




でも…






「僕が好きなのは夏実だけだよ?」




神田くんは、それを私たちにも伝えるかのように





なっちにキスをした。







…………嫌だ。






泣いちゃだめって思ってたのに
目からはすごくいっぱいの涙が溢れていた