私はため息を1つ吐くと、先生の抱きつく布団をしっかりと握った。

そして、


「いい加減にしろぉぉぉ!!」


布団を思いっきり振り上げ、先生を後ろに投げ飛ばした。

悲鳴を上げながら、綺麗な弧を描き宙を舞う先生。
受け身を取る間もなく、ゴンッと鈍い音を立てて、壁に激突した。


ふむ、今日はなかなか飛んだな。

1人感心している私をよそに、先生は呻いた。


「ひどい、ひどいぞ紡(ツムギ)……恩人に対してこの態度って……」


腰を擦りながら半べそをかく目の前の20代男性。普通にうっとうしい。

因みに紡というのは私の名前。先生が名付け親である。

恩人というのは……まあ、また後で説明しよう。


「ひどくないです。手こずらせないでください」


私は先生の寝ていた布団をテキパキと片付けながら、準備をするように促した。


え?なんで先生に対してこんな扱いなのかって?
うーん、なんとなくです。

紡も一応女の子なんだから、暴言や暴力は控えろ!とよく叱られるけど……これが素なんだから、仕方がない。


「可愛い女の子でもいれば、やる気起きるんだけど」

「私がいるじゃないですか」


先生が私を一瞥する。


「……ふっ」

「しばくぞ」