暫く夢の余韻に浸り、ふと時計を見る。
時計の針は、10時丁度を示していた。


「うげっ、もうこんな時間!」


ぼうっとしている暇などなかった。今日は用事があるんだ。

私は素早く寝間着を脱ぎ、上衣と袴を身に付ける。
他の人とは違う金色の髪を、"あの人"と同じゴムで留めた。

よし、準備完了。

私は布団を手早く片付けると、部屋を飛び出した。

すれ違うお手伝いさんに挨拶をしながら、板を張った廊下をドタバタと走る。

そして、1つの扉の前に到着すると、私は息を大きく吸い込んだ。


「先生ぇー!起きなさい!」


そう声を張り上げながら、私は無遠慮にドアを開けた。
部屋を見渡すと、目の前で、布団の塊がもぞもぞと動いた。

……そこだな。

私は塊に近づき、その布団を剥ぎ取った。


「……いつまで寝る気ですか?先生」


呆れながら、その塊の主にそう言う。

そこには、私の恩師であり家族でもある、奏(カナデ)という男が蹲っていた。
先生は往生際悪く、私の持っている布団に抱きつきグイグイと引っ張ってくる。


「お願い……あと5時間寝かせて……」

「アンタどんだけ寝る気ですか!?」


私のツッコミも虚しく、先生は布団に抱きついたまま、再び夢の中に落ちていった。なんて寝相してるんだ。

ダメ元で布団を右に左に揺らしてみる。勿論起きる気配はない。

いつもなら、もう少し寝かせてあげるかもしれない。でも今日は起きてもらわなきゃ困るんだ。