「やめて……っ!」
ガバッ!と、布団のめくれる音がした。
……布団?
見ると、私は綿が詰め込まれた布団を突き飛ばし、跳ね起きていた。
外では小鳥がチュンチュン鳴いているのが良く聞こえる。
今のは、夢なのだろうか。
「……嫌な夢」
かなりリアルな夢だった。
罵倒を浴びせられる悲しみも、首を絞められる苦しさも、鮮明に思い出せる。
それなのに、私を取り巻いていた大人達の顔や私の首を絞めた男の顔は、どうしても思い出せない。
額を拭うと、ぐっしょりと嫌な汗が手の甲に付いた。背中にも汗がベタベタと張り付いていて気持ちが悪い。
きっと昨晩は熱帯夜だったし、悪い夢にでもうなされていたのだろう。
そうじゃなければ、あんなに小さかった頃の私の夢を見る訳がないのだから。