「兄貴ぃー、本当にこの小娘がそうなんすか?」
その内の一人が、一番親玉っぽい男にそう言った。
兄貴と呼ばれた男は体格がよく肌が浅黒くて、ダルマのような顔つきをしている。
一見はただのゴリラだけど、その体からは拭い切れない悪臭の匂いがプンプンする。
こいつらが私とどういう関わりがあるのかは知らない。
ただ、この男達は明らかに裏の世界の人間だ。
ゴリラが口を開いた。
「ああ、間違いねぇ。しかも顔はかなり上玉だ、顔は傷つけるなよ。こりゃ高く売れるぜ」
「私が何か?」
ジロリとゴリラを睨む。
しかしゴリラは怯むことなく、ニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
「すっとぼけて時間稼ぎってか?
悪いがお前の一族の事は知っている。観念しろ」
肩がピクリと反応した。
今、こいつなんて言った?
私の一族……?
「私が何者か、知っているんですか!?」
思わず警戒する事も忘れ、身を乗り出してそう言った。
心臓がドクドク鳴る。
もし……もし私の正体を知ってるなら。
私の知らない私を思い出す鍵になるかもしれない。
「がっははは!面白い奴だな。ああ、よく知ってるぜ!」
ゴリラは私が冗談とでも思っているのだろう。随分と舐めた眼差しを私に向ける。
「その金髪に金の目……
てめぇはあの奇妙な"呪術"を使うという、"呪族"の末裔だろ?」