とはいえ、人通りの多いここで揉めるわけには行かない。
私は薄暗い路地に入り、すっと目を閉じた。

何者かが忍び寄ってくる。

神経を研ぎ澄まし、懐に忍ばせていた短刀に手をかけた。

それと同時、抑えられていた殺気が糸を切ったようにどす黒く大きな物へと変わった。


……来る。


「オラァッ!!」


ガキーン!と派手な音を立てて、刃と刃がぶつかり合った。

どこからか現れた、体格の良い男。
ギリギリと私の短刀に鉤爪を押し付けてくる。


「……何者だ?」


そう問うた時、男の後ろから更に数人の男が現れた。
男はそれに気づくと、後ろに飛び退く。

私は集団に目を移した。ガラの悪そうな男が6人もいる。
こんな大人数が、一体私になんの用があるのか。