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ふりかかる視線の中を突き進み、ようやく私は薬草屋についた。
路地裏からでも、色んな薬草の香りが漂ってくる。
「いらっしゃい……
おや、紡ちゃんじゃないかい!」
店の台の鈴を鳴らすと、中からふくよかな体の女性が現れた。
この人とは昔から面識があり、私が先生に"拾われた"日にも怪我の手当をしてくれた。
「大きくなったわねぇ、いくつになったの?」
「17になります」
おばさんが「まあまあまあ!」と目を輝かせた。
「初めてあった時からもう7年もたつわねぇ!相変わらず綺麗な髪と目だこと!」
ニコニコと私の髪に触れて楽しそうに話すおばさん。
皆が私を好奇の目で見てくる中で、こうやって友好的に話してくれる人はとても貴重な存在だ。
「あはは、ありがとうございます。あの、薬草を下さい」
「ああ、そうだった。いつものね!」
おばさんは手をポンッとさせると、店の奥に入っていった。
奥には薬草の壺がたくさん置いてあって、袋にそれを詰めてもらうのがいつもの流れだ。
私は準備をしてくれているおばさんを、ボーッと見つめる。
そういえば、先生今何してるんだろう。
時間になれば馬車の発着所に来ると思ったけど……そういえば、あの人かなりの方向音痴だ。大丈夫かな?
「そういや、あの色男の先生はいないのかい?」
おばさんが薬草を漁りながら言った。この店にはいつも先生と来るから、おばさんも気になっているようだ。
「はぐれました」
そう言うと、おばさんが目を丸くして振り返った。
「あらまぁ、そりゃ気の毒に……。ここで先生待ってるかい?」
「いえ、ご迷惑をおかけするわけにはいかないし……私はそれまで街を散策しています」
「そうかい?でも気をつけなよ。ここらには悪い輩がいっぱいいるんだからね」
「はい。ありがとうございます」
悪い輩、か。
先生つるまれてないといいけど。
そんなことを思いながら、私はお金を渡し、店を後にした。