薬草屋のある路地裏に行くには、しばらくこの通りを歩かなければならない。

人通りの多い道を1人で歩く事は、私にとってかなり苦だ。


「……見られてるなぁ」


人に聞かれないくらいの声で呟く。


私は道行く人をチラッと盗み見る。その人とはバッチリ目が合い、すぐさま視線をそらされてしまった。


……はぁ。


心の中で盛大なため息を吐くと、私は下を向きながら歩く事を決めた。


私の髪と瞳の色は、目が覚めるような派手な金色をしている。
少なくともこの近隣の国ではありえない色だ。

いくら異国の人が沢山いるこの都でも、金色の髪をした人間はそうそういないだろう。普通は黒だから。


先生と2人でいるならまだしも……1人でいるとまわりの視線が気になって仕方がない。

私がどこから来たのか、なぜこんな異質の髪と目をしているのか。親族はどこにいるのか……
もし記憶があったら、どんなにこのモヤモヤした気持ちが解消されるだろう。


しかし、今の私はやるせない気持ちで前に進むしかなかった。